ここは箱庭。 ここは鳥籠。 ここは遊び場。 ここは巣箱。 ここは孤児院「囀りの家」。 ──男が語る。 「我々の世界は知覚によって成る」 「視覚。聴覚。味覚。触覚。嗅覚。あるいは伝聞。あるいは痕跡」 「そう」 「ここに、ひとつの痕跡がある」 「土地の登記書。幾枚かの写真と記録。名簿。雑貨、食品の納入伝票」 「我々はこの地に何があるかを知っている。たとえこの目で見たことがなくても」 「だがここは、本当に存在するのだろうか?」